先輩の彼女
「谷岡。斎藤と一緒に仕事するのも、今日が最後かもしれないぞ。」

「なんですか?それ。」

山田さんの適当発言に慣れている谷岡君は、衝撃の一言を言っても、さらりと受け流せるタイプ。

今時の若者だ。

「ああ~。私、営業部に異動になったんだ。」

「えっ!?久実さんが営業!?それって大丈夫なんですか!?」

私がいなくなるよりも、仕事ができるか心配してくれるなんて。

いい子を通り過ぎて、生意気だ!!


「大丈夫もなにも、やんなきゃいけないの。仕事なんだから。」

一応社会人の先輩っぽい事を言って、私は段ボールを持った。

「途中まで持ちますか?」

谷岡君が親切に、両手を差し出してくれた。

「ううん。思ったよりも軽いからいいや。」


そう。

自分でも悲しくなるくらい、荷物が軽い。


「じゃあ、お世話になりました。」

私が頭を下げると、一応みんな『頑張れよ!』と声を掛けてくれた。
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