先輩の彼女
私は、またビールを飲み出した。

「斎藤?」

「あー、よかった。ビールもう一杯、お願いします。」

間野さんの問いかけを無視して、私はビールを注文。


そうしなければ、泣くところだった。

正直言って、間野さんの口から『絹花と結婚する。』なんて言葉、聞きたくなかった。

親友として聞かなきゃいけないなんて、残酷すぎる。


「お待たせ。」

お手洗いから帰ってきた絹花が、空いたジョッキを見て、驚く。

「えー!久実、そんなに飲んだの?なんかあったの?」

「別に。ただ、お目出度い話を聞いてると、飲みたくなるじゃん?」

「はははっ!」

絹花の幸せそうな顔が、場を和ませる。


「ねえ、二人の馴れ初めを聞かせてよ。」

「馴れ初めって、いつの時代の言葉?」

間野さんと絹花が、目を合わせる。

「ああ、じゃあ……出会ったきっかけ!」

私はついでに、枝豆を頼んだ。

「うーんとね。簡単に言えば、私がモデルをしていた雑誌の編集者が、裕一だったの。」
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