先輩の彼女
嬉しそうに語る絹花に対して、間野さんは至って冷静。

「それだけじゃあ、付き合えないでしょ?ね、どっちが先に声を掛けたの?」

後から思えば、そんな余計な事、聞かなきゃよかったのに。


「裕一だよね。」

「俺?」

「惚けないでよ~。『今日、飲みに行かないか?』って最初に言ったのは、そっち!」

絹花の記憶の方が正しいと思ったのは、間野さんが照れているからだった。

「それでね、面白いの。雑誌片手にここがいい、あそこはダメ、もっとこうしろ、こういうイメージで行けって事細かに、指定してくるの。」

「指定じゃなくて、アドバイスな。」

絹花にツッコミを入れる間野さんは、すっかり絹花の扱いに慣れている。

「その時思ったの。ここまで私を見てくれている人は、裕一しかいないんじゃないかって。」

「うんうん。よく分かってる。」

二人には、楽しい思い出でも、私には気が重くなる話にしか、聞こえない。
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