先輩の彼女
「それで、告白しようと思ってデートに誘ったら、裕一から『俺たち付き合わないか?』って言われて、嬉しかった。好きな人と同じ気持ちだったんだって。」


その時の様子が、目に浮かぶ。

胸が痛い。

チクチクする。

できれば、もう立ち去りたい。

二人の話は、もう聞きたくない。


「ねえ、久実。飲みすぎじゃない?」

「うーん……」

「もう帰った方がいいかも。」

私は酔った振りをして、顔を上げた。

「そうしましょうか。お邪魔虫は、退散します。」

「お邪魔無視だなんて。そんな事ないよ。久実が大丈夫だったら、一緒にいてもいいんだよ?」

絹花からの優しい言葉。

でも、だからこそ惨めになる。


「うん。でも、明日も仕事だから、先帰るね。」

「そう。気を付けて帰ってね。久実。」

私は財布を取りだし、お金を渡した。

「いいのに。今日は私が久実を誘ったんだから。」

「いいの!絹花はそんな事、気にするタチじゃないでしょ!」
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