先輩の彼女
私が席を立つと、フラッとした。

「久実!?」

隣にいた絹花が、支えてくれた。

「大丈夫、大丈夫。」

笑顔で絹花の手を離した。

「先輩、お疲れ様でした。」

頭を下げ、間野さんの顔を見ないようにした。

「絹花。俺、外まで送ってくるわ。」

「そうね。裕一、お願い。」

二人はまるで、結婚する前から、夫婦のよう。


「大丈夫です。」

「遠慮するな。」

間野さんが、私の腕を掴む。

ドキッとする。

今までは、幸せだったのに、今は悲しい。

「そうよ、久実。そんなんじゃあ、タクシーに乗る前に、危ない人に絡まれるよ。」

絹花は、本気で心配してくれている。


私が、間野さんを好きだなんて、これっぽちも知らない。


「行くぞ。」

絹花を置いて、私と間野さんが、お店の外に出る。

「今、タクシー拾うから。ここで待ってろ。」

「はい。」

私の腕を掴んでいた、間野さんの手が離れる。
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