先輩の彼女
あっ、間野さんの温もりが、無くなってしまった。

そんな事考えながら、間野さんの背中を見る。

私の為に、必死にタクシーを見つけようとしてくれる間野さん。

これが、絹花の彼氏じゃなくて、私の彼氏だったら?


私は、世界一幸せな女だったかもしれない。


ふいに間野さんが手を挙げ、タクシーが彼の前に止まった。

残念なくらいに、早く見つかってしまうな。

「斎藤。」

間野さんに呼ばれ、タクシーに乗る。

「自分の家、言えるか?」

私は間野さんを見る。


酔って言えないって言ったら?

間野さんは、一緒にタクシーに乗って、私を家まで送り届けてくれるんですか?


そんな声無き声が、間野さんに届いたようで、彼は下を向いた。

「飲みすぎだ。危なくなったら、絹花に電話しろ。」

そう言って、間野さんはタクシーから、離れた。

ドアが閉まる。

もう、間野さんの顔も見えない。
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