先輩の彼女
「どこまでですか?」

タクシーの運転手さんに、場所を聞かれた。

「ああ……とりあえず、真っ直ぐ行って下さい。」

「はい。」

そして、タクシーは動き出した。


私は後ろの席から、間野さんを探す。

間野さんは、まださっきの場所に、立っている。

思わず後ろを向いた。

それに気づいたのか、手を振っている。

いつもは、後ろ向きなのに。

今日は、私の方を向いて。


だんだん小さくなる間野さんを見続けて、涙が溢れた。

どうして、そんなに優しくしてくれるんですか?


絹花の親友だから?

会社の後輩だから?

当たり前すぎる理由に、更に涙が溢れる。


恋はなんて、辛いんだろう。

学生の時なんて、一度も辛いなんて、思った事なかった。

結婚なんて、なかったから。


「……っ」

そして今さら、思い知らされる。

こんなにも、間野さんの事を、好きだって言う事を。
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