先輩の彼女
目が合った間野さんは、目を大きく見開いて、驚いている。

恥ずかしい。

こんな顔、間野さんに見せたくなかった。


「はい……タクシー拾って頂いて、有り難うございました。」

とりあえず、お礼。

「……ああ。」


間野さんは、大人だ。

こんな酷い顔を、見て見ない振りをしてくれている。


朝礼が終わり、仕事が始まる。

だが、タイミングが悪い事に、書店周りは昨日で終わってしまった。

とりあえず、仕事がある振りをするしかない。

私は書店周りをしたデーターを、ファイルに書き始めた。


「斎藤。」

間野さんの呼び掛けに、手が宙に浮く。

「はい。」

「来月の営業目標。今のうちから考えておけよ。」

「分かりました。」


営業目標。

ファイルを探し、前任の工藤さんのファイルを探す。

あった。

中身を見て見ると、それなりの数字と目標が、書かれていた。

大変だ。

だからみんな、『営業って、大丈夫なの?』と、心配するんだ。
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