先輩の彼女
「じゃあ、私。この奥だから。」

私は一番奥の本棚を指差した。

「分かりました。何かあったら、大声で叫んで下さい。」

「はははっ!」

谷岡君の男っぽい性格、好きだな。

そんな事考えながら、私はあてのない散歩を始めた。


段ボールの箱。

蓋を少し捲ってみると、レディースコミックのタイトルが出てくる。

隣も、またその隣も。

こんなに売れ残ってるのかと、改めて思う。


本棚の上には、また開けていない段ボールが。

「これは何のジャンルなんだろう。」

そんなに高い本棚でもない。

私は背伸びをして、その段ボールを取ろうとした。

「もう少し……」

指で手前に引きながら、もう少しで手の平に乗る。

「おっ!」

取れたと思ったら、想像以上の重さ。

段ボール事、私の頭の上に落ちそうになった。


「きゃあ!」

思わず叫んでしまった。

「久実さん!?」

近くにいた谷岡君が、慌てて駆けつけてくれる。
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