先輩の彼女
「危ない!」

間一髪、谷岡君が私の腕を引いてくれたお陰で、私は段ボールの下敷きにならなくて済んだ。


「どうしました?」

営業部の白石さんが、倉庫のドアを開けてくれた。

「すみません。段ボールを取ろうとしたら、落ちてしまって……」

「あーあ。」

白石さんが、私と谷岡君の間を縫って、前に出る。

「よかったね。下敷きにならなくて。」

「はい。」

本当によかったと、谷岡君と目を合わせて、ほっとする。

「これ、片付けなきゃ。」

白石さんが、本を拾い始める。

「ああ、白石さん。私が片付けます。」

私もしゃがんで、本を拾っては段ボールの中に入れる。

「あっ、僕も。」

谷岡君も、私の隣にしゃがんで、一緒に本を拾ってくれる。


「じゃあ、お願いするね。俺、他の仕事あるから。」

「はい。来てくれて、有り難うございました。」

頭を少し下げると、機嫌が良くなった白石さんは、弾むような足取りで、帰って行った。
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