涙とキスと隣の泣き虫
好きな人
「……リキ、今度はどうしたのさ?」
私の台詞が溜め息と共に落ちた。
先輩と別れ、渡り廊下を走って隣の校舎にきてみれば、しゃがみ込むリキの姿が視界に入った。
「ま、迷子に……なっちゃって」
私に気付いたリキは、溢れ落ちるように涙を流している。
「はぁ?」
迷子なら別に私じゃなくても連れて帰れんじゃん!なんて、何ともやりきれない理不尽な思いが生じる。
そんな中、ふとした疑問が沸き上がった。
「リキ、入学して何ヶ月たつの?」
「さ、3ヶ月……」
リキは右手でゴシゴシと涙を擦る。
「方向オンチなのは昔から知ってるけどさぁ」
「ハナちゃん、ごめんね?」
「何で1人で旧校舎なんて来たの?」
私が鋭い視線を落とせば、まだ赤い鼻を啜るリキが見えた。