涙とキスと隣の泣き虫
「ご、ごめん……」
「ごめんじゃなくて、何で来たか理由を聞いてるの!」
バシンとリキの頭を叩けば、
「い、痛いよぉ……」
自分の頭を擦る涙目のリキに視線を向けられる。
「だから!!何しに来たの?」
「……」
こういう勘って、男子より女子の方が優れていると思うのは私だけだろうか。
目の前には質問に黙り込んでしまうリキがいて、瞳に涙を溜めて怯えている様にも見えるんだけど。
わざわざ旧校舎まで走って、リキを迎えに来た私には知る権利はあると思う。
「もしかして、はじめてじゃ無い?」
しゃがみ込んでリキを覗き込めば、今にも泣きそうな顔を真っ赤にしたまま首を縦に動かす。
「……ピ、ピアノを」
リキが"ピアノ"そう口にした途端、私達のいる廊下にある音色が聞こえてきた。