涙とキスと隣の泣き虫



「ご、ごめん……」

「ごめんじゃなくて、何で来たか理由を聞いてるの!」

バシンとリキの頭を叩けば、


「い、痛いよぉ……」

自分の頭を擦る涙目のリキに視線を向けられる。


「だから!!何しに来たの?」

「……」

こういう勘って、男子より女子の方が優れていると思うのは私だけだろうか。

目の前には質問に黙り込んでしまうリキがいて、瞳に涙を溜めて怯えている様にも見えるんだけど。
わざわざ旧校舎まで走って、リキを迎えに来た私には知る権利はあると思う。


「もしかして、はじめてじゃ無い?」

しゃがみ込んでリキを覗き込めば、今にも泣きそうな顔を真っ赤にしたまま首を縦に動かす。


「……ピ、ピアノを」

リキが"ピアノ"そう口にした途端、私達のいる廊下にある音色が聞こえてきた。


< 12 / 107 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop