涙とキスと隣の泣き虫
「いつ知り合ったの?」
人の不幸話とまではいかないけど、人の恋バナ程面白いものは無い。
「し、知り合ったっていうか」
私によるリキへの質問攻めが始まっていく。
「うんうん」
「この間、科学室に忘れ物して旧校舎に取りに行った時に」
「1人で?」
「う、うん。今日と同じ感じでピアノの音が聞こえて」
「うんうん」
「その音につられて歩いてたら」
「うんうん」
「あの人がいて……」
「うんうん」
「……」
「……」
「それだけなんだけど」
「それだけ?」
「う、うん」
「話とかした訳では無いの?」
「そ、そんなの無理だよ……」
と、顔の前で両手を振るリキを見て、好きな相手でも出来ればもう少ししっかりするだろう。
なんて、一瞬でも頭を過った甘い考えはすぐに吹き飛んでいった。