涙とキスと隣の泣き虫
「あの人、3年生だよ」
「え、ハナちゃん知ってるの?」
溜め息と共に呆れた声を落とせば、リキが男子にしては少し大きめな目を丸くしてみせる。
「うん、先輩と同じクラスだよ」
「そうなんだ、先輩だったんだ」
ポカンと口を開けるリキを見て、本当に何も知らなかったんだなと心の中で苦笑いが漏れた。
「先輩に頼んでみようか」
「いい!いい!絶対にそんな事しなくていいからね!」
「好きなんでしょ?」
「違うってば!」
「付き合ってみたいとか」
「ハナちゃん、何言って……」
「手ぇ繋いで一緒に帰りたいとか」
「そんな事……」
「チューしたいとか」
「……ッ」
隣を歩くリキを覗き込めば、笑っちゃう位に顔が赤くなっていく。
悪ふざけでリキの唇に右手を伸ばして、ゆっくりと人差し指と親指で摘まめば、リキのぷっくらした唇が想像以上に柔らかくてびっくりした。