涙とキスと隣の泣き虫
「はい?」
「だから、夏休みが盆以外……」
「私、いつもリキの世話してるじゃないですか?」
「ちゃんと、追試さえクリアすれば……」
「私の夏休み返して下さい!」
「そんなの知らねぇよ」
担任の溜め息と共に吐かれた台詞は職員室のざわめきに消えていく。
"知らねぇよ"じゃねぇよ、この禿げが!
お前のせいで私は毎日走り回ってるっていうのに。
たった今、私の目の前で呑気にコーヒーなんて飲んでんじゃねぇよ。
彼氏有りの夏休みが毎日補修になるかもしれないなんて。先輩は受験生だからそれどころじゃないかもしれないけど、高校入ってはじめての夏休みが無くなるなんてあり得ない。
「じゃぁ、深澤に勉強見て貰えよ」