涙とキスと隣の泣き虫
「なんで、リキに」
「深澤、頭だけは良いからな。見かけによらず」
生徒に一言多いだろうと、突っ込みも入れられず。
「や、私は……」
机の上にある自分のテストに視線を落とせば、1ケタの数学が目に入る。
先輩に、見てもらうわけにもいかないか。
先輩は受験生だから忙しいとかそういう問題じゃなくて、こんな点数見せられない。
「どうする?」
口元を緩ませる担任から渡されたテスト用紙を、右手でぐしゃりと握りしめる。
半分納得のいかないまま、そのまま先輩のクラスに行って、一緒に帰るのを断った。
「僕に出来る事、こんな事しかないけど一生懸命教えるね!」
重い足取りで教室へ向かえば、もう担任から話を聞いたらしいリキがシッポを振って待っていた。