涙とキスと隣の泣き虫
クラスの皆はもう残っていなくて、放課後の教室には私とリキだけになる。
元々席が隣同士だからそのまま乱暴に机をくっつけて、私とリキの勉強会が始まった。
「ハナちゃん、どこが分からないの?」
「全部」
「どこがどう分からないの?」
「全部」
補習にも担任にも、この状況、リキ、全てに対して苛々するからという理由で、シャーペンを机にカンカンカンと小刻みに打ち続ける。
眉を下げて困った様な顔をするリキに強気の口調で返せば、簡単にリキの目に涙が溜まっていくから、すぐ泣くかと思った。
「じゃぁ、テスト直しからいこっか」
なのに、リキは泣くのを我慢したのか、一端唇をぐっと噛み締めて顔を歪ませてから笑顔を作る。
「問1からいくよ」
なんて張り切るリキの言葉に、"なんだよコイツ泣かないのかよ"思いながら、頬杖をついたままやる気無く頷いた。