涙とキスと隣の泣き虫
「この問題はね、こうするんだよー」
「あ、本当だ」
「この公式を暗記しとけば大丈夫」
「うんうん」
リキは私の点数を見ても、別に驚く事も無く。もちろん馬鹿にする事もない。
私の新品同様の教科書の重要なところにマーカーをする時だって、きちんと了解をとる丁寧さ。
この後も"分からない"と言えば多分基礎教えはじめて、"何が分からないか分からない"と言えば、本当に事細かく説明をしてくれた。
「わ、分かった……かも」
「本当に?じゃぁ次の問題いくね」
教科書を片手にシャーペンを握るリキはニコニコしていて、面倒臭がる様子は無い。
「い、痛いってば」
リキの癖に生意気だ。なんて思っていれば、無意識のうちにリキの頬をつねっていたみたいで。
「あぁ、ごめんごめん」
「ハナちゃんの乱暴……」
涙目で私に目を向けるリキを、つくづくお人好しだなぁと思った。