涙とキスと隣の泣き虫
ーーこんな調子で、リキに勉強を教えて貰いはじめて3日目となった放課後。
「先輩!」
私の声が響くのは3年生の教室で、先輩の教室の入り口にリキと2人で立っている。
「アイ、どうしたの?深澤くんまで」
「先輩の顔を見に……なぁんて」
私の隣に立つリキは、無理矢理連れてきた事もあって既に半泣き状態。
教室の中に残っている女の先輩達が、こっちを見て"可愛いー"とか言ってクスクスと笑っているのが分かる。
そんなの気にしないで、先輩の後ろから教室の中を見渡せば、後ろの方の席にあの例のリキが好きな女の先輩の姿が目に入った。
やっぱり小柄のその女の先輩は鞄に荷物を入れて、丁度帰りの準備をしている。
リキの腹を右肘でつついて、存在を教えてあげようとした。
「ハ、ハナちゃん。痛いよ?」
なのに、鈍感リキは全然気が付かない。
「ほら、後ろの席」
眉を下げるリキを睨み付けてから小さく耳打ちをすれば、やっと気付いたらしいリキの頬は一気に赤くなっていった。