涙とキスと隣の泣き虫
「ま、簡単にさせてくれたしね」
続けられた台詞が信じられなくて、それと同時に頭をガツンと殴られた様な痛みが走る。
「へー、ラッキーじゃん。結構いい?」
「まぁまぁかな」
「マジで?今度、俺もお願いさせて」
「……別にいいけど」
いつもと変わらない穏やかなトーンなのに、続けられる台詞に全身が凍りついていく。
「田所、お前。いたいけな1年に鬼畜だなー」
「そぉかー?」
「はじめての男がコイツなんてマジで気の毒」
"ギャハハハハ"なんて、壁1枚向こうの教室から聞こえてくる笑い声が凄く遠くに感じた。
ドアを開ける勇気もその場を離れる気力も無い。ただ、足がガクガクと震えて立ち尽くす事しか出来なくて、私の頭の中は真っ白になっていく。