涙とキスと隣の泣き虫



先輩は私の初の彼氏で。男の人と手を繋いだのも、キスだって全部はじめてだった。


"え、ファーストキス?"

"は、はい……"

真っ赤な顔をして震える私を、あんなに優しく抱き締めてくれたのに。


"無理ならすぐ言って"

"だ、大丈夫です"

先輩の大きな手が私の頭を撫で下ろして優しく笑ってくれたから。身体だけじゃなくて、心の中も繋がれたと思ってた。




"アイ、大好きだよ"


触れた唇も交わした言葉も、繋いだ手さえ。
全部、全部嘘だったんだ──。




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