涙とキスと隣の泣き虫
後退りしたところで、どんっと背中が何かにぶつかった。
「せ、先輩?」
後ろを振り返れば、ニッコリと笑みを浮かべる先輩が私の両肩に手を乗せる。
「ごめんね、アイ」
「……」
「こいつらマジでウルサいからさぁ、ちょっとだけ相手させてあげて」
爽やかな笑顔のまま信じられない台詞を発して、そのまま私の背中をトンッと前へ押し出した。
よく知らない男の人が私の肩を掴んで気持ちの悪い笑みを浮かべてから、そのままソファへとゆっくり座らせる。
「ほら、アイちゃんもちょっと飲もっかー」
なんて、口元に無理矢理押し付けられるコップからは、明らかにアルコールの臭いが漂ってきてーー。
「……なよ」
自分の中で何かがブチ切れる音がした。