涙とキスと隣の泣き虫
「アイちゃん。強いんだね」
なんて先輩が冷や汗を垂らしながら空笑いをみせた。
「なんだよ、この女!」
背後から聞こえた声と共に、さっきの長髪の男の人が拳を上げて飛びかかってくる。
素早くよけて、ぐるんと回りながら脛めがけて足を蹴り落とした。
「いってぇ……何だよ!マジで何なんだよ!」
なんて叫びながら、床に転がりながら足をかかえる。
「ははッ、アイ、さ。何かやってたの?」
呆然とする先輩の胸ぐらを掴んで、そのまま後方の壁に押し当てる。
「一体、何のマネですか?」
「いや、冗談だよ」
ギロリと睨み付ければ、逃げ場を無くした先輩は、両手を上げながら苦笑いを見せた。