涙とキスと隣の泣き虫



リキの言葉が心にのしかかる。

住宅街は異様なまでに静まりかえっていて、リキの透き通った声がよく聞こえた。アスファルトの上で足を止めて、私達は自然と向かい合う形になるのだけど。
なんで、リキがこんな事言うのか。


「だって、嫌な事があるといつも僕に意地悪してくるじゃん」

「……」

別に意地悪でしてるつもりは無いんだけど。

でも、あっさり別れを認めないで欲しかった事
ひき止めて欲しかったのは事実。

悲しくて、悔しくて、別れ話をした時に本当は先輩に止めて貰いたかった。





「な、なんでリキが泣くのよ?」

「だ、だって……」

「なによ!」

「ハナちゃんが泣かないんだもん」

「……」

リキの涙は小学生の頃から、何回見ただろうか。下手すれば4桁にいっているのに。

目の前で涙を流すリキの髪が夕日に染まって、色素の薄い髪の毛がオレンジ色に映し出された。
そして、限りなく溢れ落ちる涙は迷い無く頬を伝っていく。



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