涙とキスと隣の泣き虫
保健室のドアを開ければ、さっきまで体育館にいた筈のリキの姿があった。
「あれ、ハナちゃん。どうしたの?」
「……」
「もしかして、足、引きずってる?」
そう言って、丸い椅子に座っているリキは私の足元へと視線を落とす。
「……リキは?」
「指がボールに当たっちゃって……」
「ふーん」
相変わらず鈍臭いなと思ったと同時に、保健室の独特の薬品の匂いが鼻についた。
歩けるし全然大したことは無い。けど、運動神
経だけはいい筈の私が、今日は調子に乗って足を捻ってしまったのは事実。
「め、珍しいね……」
リキはそう口にしてから、そをとベッドのあるカーテンの方に視線を向けた。
「リキはいつもの事だね」
リキの指に目を向ければ、確かに少しだけ赤くなっているのが分かるけど。指だけでなくて、頬が少し高潮して見えるのは気のせいだろうか。
「ごめんね、お待たせ」
保健の先生の声が聞こえてカーテンが開かれた時。
その向こうに見えたのは、リキが好きだと言ったあの女の先輩の姿だった。