涙とキスと隣の泣き虫
「あー、もう別れちゃったんですけどね…」
「えっ!そうなの?」
「夏休み前に」
「ご、ごめんなさい。知らなくて」
気まずさそうに下を向いてしまう彼女に、私はヘラヘラと笑顔を向けた。
「全然、平気なんで」
なんて付け加えたところで、先輩はしょんぼりするばかり。別にこの人が悪い訳じゃないんだし、どうでもいいんだけど。
「先輩、ピアノ弾いてますよね?」
「えッ?」
「音楽室で」
「な、なんで知って…」
隣のリキがギョッとしていたけど。
「せっかくだから、少し話しませんか?」
にっこりとそう口にすれば
「え、あ、うん…」
垂れ目で優しそうな先輩の瞳が戸惑いで揺れたのが見えた。