涙とキスと隣の泣き虫
「妹がねもうすぐ誕生日なの」
旧校舎の音楽室の一角で小さな声が響き渡った。
「もうすぐって?」
「さ来週なんだけどね、その時にピアノで弾いてあげたいなーって思ってね…」
先輩はちらりと私に視線を向けてから、
「見られてたんだね」
なんて恥ずかしそうに眉を下げてふんわりと微笑むものだから、同性の私でさえドキリとしてしまう。
「な、夏休み前に、たまたま見たんです!ね、リキ」
「う、うん」
「わ、そんな前から?下手くそでしょ?」
確かにお世辞でも上手いとはいえるレベルじゃなくて、ははッと笑ってごまかしてみせた。