涙とキスと隣の泣き虫
「だったら?」
「え?」
「だったら何なの?」
帰り道の団地内に響いた声が大きくて、自分でも驚いた。
「え、だから何か無理してるのかと思って……」
なんて続けられるリキの言葉が更に発破をかけて私を苛立たせる。
「別に無理してねぇよ」
ギロリとリキを睨み付けては、
「いっ……」
そのまま胸ぐらを思いっきり掴んで壁に押し付ければ、リキの頭がブロック塀にぶつかる音が耳に入る。
「ハ、ハナちゃ……。い、痛いよ?」
「あーぁ。また泣いちゃったね」
そう口元を緩ませて、リキの涙が伝う頬を空いている左手で拭った。