涙とキスと隣の泣き虫
部屋は静まりかえって微妙な雰囲気が漂う中、耳に入ったのは車のエンジン音。
と、続いて玄関の鍵がガチャリと開けられる音。
私とリキが目を合わせて、慌てて制服を整えた時だった。
「アーイー!誰か来てるの?」
母親が部屋に顔を出したのは──。
部屋のノックなんて、もちろん無いものだからギョッとした。
仕事から帰ってきたのが5分前で無かったと、心底ホッと胸を撫で下ろすのも束の間。
「あらー、リキくんじゃない」
なんて私の母親はリキへ視線を向けた。