涙とキスと隣の泣き虫
「乱暴とかされてない?」
「は、はい……」
「……」
「本当に?この子、口より先に手が出るでしょー?」
「そ、そんな事……」
「……」
母の質問の内容も気に障るものだけど、リキの辿々しい反応も私の癇にさわった。
「もう、アイったら。男物の靴があるからてっきり彼氏かと思っちゃった」
"残念だわー"なんて母が言葉を続けていくから、カチンときた私の腹立だしさはマックスをむかえる。
「早く帰れよ!」
部屋の中には私の怒鳴り声が響き渡った。
「ちょっと、アイ!」
絶対また泣くかと思ったのに──。
「じゃぁ、帰るね。またね」
眉を下げて目元を細めたリキに対して、罪悪感でいっぱいになった。