涙とキスと隣の泣き虫
*****



「アイちゃん歌わないのー?」

「……」

低くて太い声がカラオケBOX内に響き渡る。
ソファの隣に座るのは、今日初めて顔を合わせる男の人。

お兄ちゃんと同じ位の……、いや、それ以上のガタイだ。


「歌わないなら何か頼もうか?」

そして、ちょっとだけ距離が近い。



「ちょっとマリどうしてくれんのよ?」

「アイ、あんたが強い男がいいって言ったんでしょー」

ヒソヒソと小声で交わされるのは、私とマリの会話。


「だからって……」

チラリと部屋の中に目を向ければ、私の視線の先には明らかに体育会系の男の人達の姿がある。



「小学生の頃から柔道をやっていて……」

「アイちゃんも空手をやってたって聞いたけど見えないねー」

「……」

なんでこんな事に……。


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