涙とキスと隣の泣き虫



「え?」


"妹がもうすぐ誕生日"確かに、前に女の先輩はそう口にしていた。


「どうだったんですか?」

義理にでもそう質問をしてみれば、


「もう散々だったの」

先輩は嘆く様な言葉が返ってきた。

確かに素人の私が聞いていても、全然上達していない事が分かる位。


「リキくんがせっかく教えてくれたのに間違えるし、ボッロボロ!」

「……そうですか」

普段穏やかな先輩が嘆く感じで台詞を続けていく。
私が音楽室へ行かなくなってからも上達しなかったんだろうな、と安易に想像できて苦笑いが出た。





「でもね……」

さっきまで眉を下げていた先輩が、目元を細めてから。


「"お姉ちゃん、ありがとう"って言って貰えたの」


ふんわりと優しい笑顔を私に向けるから、同性の私でもドキリとしてしまった。

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