ホームズの子孫はいつでも私を見つける
「……女性を泣かせるわけにはいきませんね。別にあなたを襲うつもりではありませんよ。ただ、お会いしたことがある顔なので」

男性は私から離れ、そう言う。でも私はこの人に見覚えはない。顔立ちはとても整っていて華やかだけど……。こんな人、会うと忘れることはないと思うんだけど。

「申し訳ありません。えっと……私……」

「わからなくて当然ですよ。変装していますから」

謝る私に、男性は優しく微笑む。そして顔に手をかけた。ベリッと音が響く。マスクの下から見えた顔はーーー。

「ルパンさん!?」

そこにいたのは、大怪盗の子孫で自身も怪盗であるアルセーヌ・ルパンさんだった。以前、ホームズさんと対決をしたことがある。

「こんにちは。お友達とご旅行ですか?フランスに来ていただいて嬉しいです」

「あ、ありがとうございます」

ルパンさんに見つめられ、私は目をそらす。旅行ではない。ホームズさんたちから私は逃げてきた。何となく、気まずい。
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