ホームズの子孫はいつでも私を見つける
「今日の夕食はオニオングラタンスープでいいかな?」

私が訊ねると、園子ちゃんは「やった〜!おいしそう!」と笑う。園子ちゃんに料理は任せられないので、フランスに来てからも料理はしている。園子ちゃんも「おいしい」と食べてくれて、嬉しくもなるけどやっぱり苦しい。

ホームズさんはご飯を食べているのかな。ワトソン先生は何を食べているんだろう。私が逃げたくせに、心配になっている。

私が料理が上手になれたのは、ホームズさんたちのおかげ。同居し始めた頃、「おいしい!」と二人が言ってくれたからレパートリーを増やそうと頑張れたんだ。

また、胸がギュッと寂しくなる。でも園子ちゃんは笑顔で話しかけてくれるから、私は寂しさを胸の奥にしまい込んだ。



この国に来て、どれくらい経ったかな。パリの美しい街に感動して、知らない誰かの視線に怯える日々が続いている。

少しだけ、フランス語を覚えることができた。今日は一人で街を歩いている。園子ちゃんは昨日ワインを飲み過ぎて二日酔いになってしまい、眠っている。
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