ホームズの子孫はいつでも私を見つける
「マドモワゼル、これを落とされましたよ」

マドモワゼルはフランス語だったけど、あとは英語だ。私は驚き、後ろを振り返る。するといつの間に落としたのか、私の髪飾りを持った男性が立っていた。

「あ、それは私のです!すみません」

私がそう言うと、男性はニコリと微笑む。優しげな表情にフッと緊張が解ける。ワトソン先生が患者さんたちに優しく微笑む理由がよくわかった。今日も、患者さんの診療に忙しいんだろうな……。

「マドモワゼル、少しよろしいですか?」

男性は私の手を掴み、走り出す。私は突然のことに驚くけど、抵抗することができない。男性に連れられ、人気のない場所に連れて来られる。

「……あ、あの……」

私は壁に押し付けられ、男性に両手を掴まれていた。一瞬のことに戸惑ったものの、すぐに心に恐怖が戻ってくる。ホームズさんのあのメモに、私が犯罪者に狙われているって書いてあったから……。

男性から逃げようにも、男性の方が力が強く抵抗できない。体は震えて泣きそうになる。
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