その手を離さないで。
中学一年
入学式から一ヶ月
オリエンテーションも終わり、本格的に授業が始まっていく。スピード感のある授業に必死になりながらも毎日繰り返される平凡な日々を送っていた。
もともと人見知りということもあり、なかなか周囲に溶け込めず出席番号順に並ぶ座席でほぼ一日を過ごしていた。同じ小学校から入学してきた大多数が隣のクラスに固まり、前後左右どこを見ても知らない顔だった。
「ここは中間テストに出すから、しっかり復習しておくように。」
そんな言葉を聞くたびに不安が増していく。
うまくこの生活に馴染めるのだろうかと。
朝教室に入ると「おはよう」と明るい挨拶を交わしながら、それぞれ教室の隅でグループで固まっていく。私はまだその輪に入れず、自分の席でホームルームが始まるのを待つ。
「七瀬さんおはよう。」
明るく声をかけてくれた三人組の女の子が私の前に立った。
「七瀬さんと話したいってみんなで言ってたの。良かったら仲良くしよう!」
真ん中に立つ少しふくよかな女の子が言った。活発で笑い上戸、恋愛体質の松原美紀。
「あ、ありがとう。そう言ってもらえて嬉しい、、です。」
「なんで敬語なのー!」
ケラケラ笑いながら、私の肩を叩く吉野葉月。
「次のグループ分けうちらと組もうよ。」
赤いメガネが印象的なクラスの学級委員、飯塚茉耶。
「私でいいの?」
「七瀬さんと一緒がいいんだよ!」
「七瀬さんって呼びにくいから下の名前で呼んでいい?」
「え、あ、うん。」
「私たちのことも下の名前で呼んでね。ね!葉月、茉耶!」
「もちろん!よろしくね、司!」
入学して一ヶ月私にようやく友達ができた。