その手を離さないで。


それから事あるごとに、赤木くんは話しかけてきた。私が美紀たちと一緒にいてもお構いなしに。

「あの人なんなの、、ちょっと怖い。」
少し嫌味っぽく美紀たちに言ってみた。

「葵は前からあんな感じ。」
「仲良くなれば楽しいよ。」
美紀と葉月が、笑いながら彼をフォローする。

「小さい頃から変わらないから、意外と人気もあったしね。」

「そっか。美紀と葉月は小学校からで、茉耶は幼稚園からだっけ?」

「完全なる腐れ縁。」
茉耶の呆れた口調に、私たちは笑った。

「仲良くしてみるといいよ。」

「うーん、もう少し静かにしてくれたらいいのにな。」

「葵が静かになんて無理でしょ!」

三人の話を聞く限り、悪い人ではなさそうだけど。でも私はあのペースで話されるのは得意ではない。まだどうやって接していけばいいのか距離感を掴めてないのだ。


「今日は二人一組で、お互いの顔をデッサンしてもらいます。」

お昼頃から雨が降り出したその日。私たちはスケッチブックを片手に美術室にいた。

「組み合わせは前に座っている人とやってね。」

四人掛けのテーブルに二人ずつ向かい合って座っている。そして、私の向かい側には赤木くんがいた。

「お前を綺麗に描いてやるから、俺のこともカッコよく描けよ。」
彼は、私に少しの圧力を掛けてくる。

「分かったから、静かにしてね。」
負けじと私も言い返してみるが、彼はもう集中していた。


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