人魚の涙〜マーメイド・ティア〜
「あのぅ…どうしてあたしは今車に乗せられているのでしょうか?」
隣で優雅に微笑んでいる彼を見る。
窓に肘をつき頬杖をついているだけなのになんて様になるんだ。こんちきしょう。その美貌を少しでも分けてくれ。
なんて悪態をついてしまうくらい、品がある。
「んー、学校じゃ話しづらいし万が一のことを考えてね?」
「その万が一の時ってのを聞いてもよろしいですかね?」
クスッと笑ってからこっちを向いて話し始める彼はそんな姿も様になる。
「聞いた話によるとチアキちゃんって逃げ足速いらしいし、下手にそれを捕まえるも投げ飛ばされるって聞いたからあんまり動けない空間にした方がいいかなって思って車にしたんだよ。」
いまいち説明になってるようでなってないんですけど。
って普通の人にならあたしはそう言ってただろう。
でも彼の後ろには。
ー…おい、投げ飛ばしてでもしてみろ、お前の命頂くぞ
っていう死神しか見えなくて大人しく納得したことにしておく。
そういえば車に乗る前にもこんな雰囲気出してたな。
麻奈実が心配そうにしてたのを大丈夫と言ってこの人について行ったとき外に出ようとしてたから、どこに行くんですか?って何気なく聞いたのに
ー…黙ってついてこいや
みたいなオーラを出しときながら微笑んでいる彼を見て抵抗するのをやめたのだ。
悪魔の次は死神か。
今日のあたしは本当についていないようだ。