人魚の涙〜マーメイド・ティア〜



3人を見送ったあと、それでもこの場所から動かない慎たちを見てまだ何かあるのかと思い尋ねる



「あたしたちはここから移動するの?」



あたしの質問に答えたのは敦先輩だった



「ううん、千晃ちゃんにまだ紹介したい子達がいるんだ、もうすぐ波瑠が呼びにいったから来ると思うよ。だからもう少しだけ待ってね。」



そういえばさっきから波留がいないことに気がついて辺りを見渡してからもう一度敦先輩を見ると、ニコっと爽やかに敦先輩は微笑むとパソコン片手にどこかに消えていった



「にしても、お前よ、変な喧嘩してくんなよ!」



今まで黙っていた蓮が口を開き喋りかけてきた


なんだかいつもの感じで安心した



「何よ。蓮だっていつも変な喧嘩してる常習犯じゃない。」


「う!うるせぇ!!お前と俺じゃ格が違うんだよ!!」


「はぁ?何よそれ!意味わかんない!」


「ぶっ!蓮言われてやーんの~。」



そんな蓮とあたしのやりとりを見て奏多がフラッと現れた


「なんだよっ!てめぇもこいつの味方かよ!」


「別にちーちゃんの肩持つわけじゃないけど~、いつも止めるこっちの身にもなって欲しいっていうかぁ~」


「んだよ、それは!」



と蓮がゴニョゴニョと言い訳を始めだした


あれでも、珍しく奏多が蓮を咎めるような言い回しをしてる


それなりに奏多も怒ってるのかな?


ここ最近の蓮は連日連夜暴れまわっていると敦先輩から聞いていた。


その時の敦先輩を思い出すと今でもゾッとする
後ろに死神を引き連れて、さっさと仲直りしろよと言われた気分で怖かったのを思い出す



おぉ、怖。



思い出し恐怖に自分の腕をさすっていると


「寒いのか?」


隣にいた慎があたしの行動を見て自分が羽織っていたパーカーを肩にかけてきた


いや、寒くはないんだけど…


まぁ、いいや。パーカーはありがたくかけておくことにした


「ありがとう。」


ふわっと香る慎の匂いになぜかホッとする。



そういえば海にいった時もパーカー貸してもらったな。後日綺麗に洗ってちゃんと返したけど。


ちらっと隣にいる慎を見る。


なぜか慎が隣にいるとなんでも大丈夫な気がして安心するんだよなぁ…


慎の匂いに包まれて先ほどの緊張感がなくなったせいかウトウトしてきたけどそれが吹っ飛ぶほどの衝撃が肩に走った



「ちーあーきー!!!」


「…波瑠、い、痛いかな…」



衝撃の主を見ればいつも通りの波瑠でした。



「ごめん、でもみんないたからくっつけなくて寂しかったんだ…」



うっ…。卑怯だ、シュンとした顔見たら許さざる負えないではないか。


ちきしょう!なんでこんなに可愛いんだ!女のあたしより可愛いなんて神様は不公平だ!!



「ごめんね、波瑠!よし、たくさんぎゅーしよ!」



あたしの言葉にパァと表情が明るくなり顔の周りにお花畑でもあるかぐらいの勢いで嬉しそうな顔をする波瑠。


それがまた堪らなく可愛いのだ。もうこの子に関しては存在が罪なレベルで可愛い



「へぇ~、波瑠くんが女に懐くなんて珍しいこともあるんですね~」



波瑠とあつ~い抱擁を交わしていると聞き慣れない声がしたのでそっちを見ると



…あれ、また可愛らしい子がいらっしゃる


よく見るとそこには見知らぬ人が可愛い子含めて3人いた



「この子達がさっき千晃ちゃんに紹介したいって言ってた子達だよ。」



どこからか戻ってきた敦先輩があたしに教えてくれる



「そうなんですね!この子達も同盟の方たちなんですか?」



さっきの白田、黒崎、鳥居は同盟の人たちだったからこの子達もそうなのかと思って尋ねる



「ううん、この子達はまた別で俺たちの傘下だよ。」


「傘下?」


「そう、さっきの同盟軍は一角獣、不死鳥、八咫烏、神獣って4つの組織がそれぞれの縄張りみたいなもののがあって、言わば対等な立場にしてそれぞれのテリトリーを守り合ってるんだ。」


「ふむ。」



あたしにわかるように敦先輩は丁寧に説明をしてくれる。



「あいつらは、敵でもありライバルでもあんだよ。利害が一致してるから今は同盟を組んでんだよ。」



いつの間にか隣に来てた蓮が嫌そうに珍しくあたしに説明してくれる


だからか、なんかそんなに仲良さそうには見えなかった原因は


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