人魚の涙〜マーメイド・ティア〜



でも今のここの空気はそんなピリついたものじゃない



「傘下は?」


「あぁ、傘下はね、俺たちの仲間で言い方は悪いんだけど下について手足となってこの街の俺たちの手が行き届かない場所を見てくれてるんだ。」


「なるほど…。いろいろ違いがあるんですね。」


「お前、ほんとにわかってんのかよ。」



蓮が馬鹿にしたように聞いてくるので少しムキになる



「ちゃんとわかってますー!」



そう口を尖らして訴えると蓮の手が伸びてきて頬を潰してより口を尖らせる



「ハッ、ブスがよりブスだな。」



こいつ、いつか絶対ぶっ飛ばす。


人の顔見てブスとは何事か


あたしと蓮のコングが鳴り響く前に敦先輩が遮る



「まぁまぁ、千晃ちゃんはいつだって可愛いよ。」


「敦先輩!好きです!」


「ハハッ、俺もだよ。でね、その傘下を紹介したくて連れてきたんだ。」



あたしの渾身の感謝はさらっと流されて本題に戻る敦先輩はやはりやり手だ



「高坂もちょっとこっち来て。」



昴も呼んで4人があたしたちの前に並ぶ



「紹介するね、この子が神獣の姫、春山千晃ちゃん。」



敦先輩がいきなり紹介するもんだから慌てて立ち上がり挨拶をする



「初めまして、春山千晃です。」


「ふふっ、それでこっちの紹介ね。青い髪の子が青龍の中城ね。」


「…中城です。」



目が合って少ししたら中城くんには目を逸らされてしまった


何か気に障ることでもしただろうかと考えていると



「中城は人見知りだから気にすることないよ!」



波瑠がひょこっと現れて説明してくれる。



「あ、そうなんだ。よかった!」


「んで、こっちのチャラ目の一つ結びしてる男が、緑龍の早乙女。」


「よろしくね、姫ちゃん!」



今度はかなりフレンドリーに話しかけてきてくれた。


…けど気になる。話し方が若干オネエなのはどうして?


これは触れてはいけないのかな。うん、きっと何かあたしの思い違いだ。



「あ、姫ちゃん今私の喋り方気にしたでしょ!私、オカマなの!女の子の気持ちはわかるから何かあったら相談してきなさい」



そういってあたしにウィンクしてくれる


あたしの感じたものはそのまま受け取っていいらしい。



「緑龍には女の子もいっぱい入ってるんだ。そういう行き場所のない女の子たちのいい隠れ蓑になってくれてる。」


「か弱い女の子はほっとけないじゃない。」



…なんか素敵な人だな。確かに早乙女さんには相談したくなるような雰囲気がある。


早乙女さんを見てほっこりしていると



「マッシュの髪型してるこの子は黄龍の三宅ね。」


「初めましてー!姫ちゃん!握手しよー!」



これまたフレンドリーな子だ。と思いながら握手する



「そうだ!姫ちゃんは甘いもの好きー?これあげる!」



そう言って三宅くんがくれたのはいちごみるく味のキャンディだった


なんというかホワホワしてて陽だまりみたいな子だ


三宅くんも波瑠とは違う意味で癒し系なんだろうな



「あと、白龍の高坂。でも、高坂とは知り合いなんだよね?」



三宅くんにホワ~ンと癒されていると、敦先輩は改めて昴のこと確認してきた



「あ、はい!昴とは高校始まった時にすぐ知り合いました。麻奈美が元々あたしの幼馴染みたいなものなので再開したその日に家にお邪魔したら昴がいました!」



今でも思い出すなぁ~、もう会うことはないと思ってた麻奈美に入学式の日同じクラスで再開したときは涙が出るほど嬉しかった。


再開してすぐ麻奈美の今の自宅に遊びに行ったときここなら麻奈美は幸せに暮らしていけると昴のご両親をみてそう思った



「敦さん!黙っててすんません!」



昴が何故か謝る



「いいよ、高坂。なんとなく気づいてたし。初めて千晃ちゃんに会った時妹ちゃんがいたからもしかしてって思ったんだよ。」


「あぁ?なんだよそれ。聞いてねぇぞ敦。」



蓮が口をはさんで抗議する。



「うん、言ってないよ。別に言う必要ないと思ったし。」



爽やかな顔してさらっと流す敦先輩の顔をみて思い出す


あ、確かに。初めて会った時保健室に敦先輩が迎えにきたあの日、あたしの隣に麻奈美はいた。



「え、じゃあお互いに知らんふりしてたってこと?」



あたしの質問に敦先輩が困った顔でこたえる


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