人魚の涙〜マーメイド・ティア〜
「じゃあそろそろ宴会にしようか。」
それぞれがいろんなことをしながら、敦先輩の一言でパッと携帯を見ると時間はもう19時になっていた
あたしはほぼ麻奈美と喋ってただけだけど。
遠くから見てたけど敦先輩と中城さんはほぼパソコンに掛り切りで。蓮と奏多、昴で何かを話し込んでて。慎と早乙女さんは地図を見ながら何やらマークを打っていて。波瑠と三宅くんはどこかに行っていた
それより気になるのは宴会。
「敦先輩、宴会って何やるんですか?」
あたしの問いかけにニコッと笑って答えた
「宴会ってのは、宴会だよ。」
めっちゃ、怖い…
この人が説明をせずに何かをはぐらかしてにこやかに答えるときは決して何かあるような気がしてならない
「…そんな怯えなくても大丈夫だ。」
いつのまにか早乙女さんと話が終わってあたしの隣にいた慎はポンと頭を撫でる
「お前は俺の隣にいればいい。」
…まぁ、慎が隣にいるなら安心できる
「わかった、隣にいる。」
「今年は、黄龍の溜まり場でやるから行こうか。多分もうみんな移動し始めてると思うから。」
あー、だから波瑠と三宅くんはいなかったのか
多分先に黄龍の倉庫に行ってるんだろうな。
「おら、チンタラしてんじゃね、行くぞ。」
蓮があたしの腕を引き立ち上がらせる
「みんな行くの?」
「はぁ?当たり前だろ。親睦会みたいなもんだ。まぁ、他の傘下のやつもお前のブスヅラを拝ませられることになるけどな。」
「え、なにそれ。あたしはそこまでブスじゃないわよ!みんなの目が腐り落ちるとこまではまだ行ってないもん!!」
「ハッ、どうだか。おら、行くぞ。お前がブスじゃねぇって証明して見せろ。」
まぁ、蓮の挑発にのったみたいな感じになってるけど、あたしが行っても大丈夫なやつらしい。
「麻奈美も行くよね?」
「うん、一応ね。私も白龍の姫ではあるし。」
「やったー!一緒に行こ!」
麻奈美も行くって分かってみんなでゾロゾロ移動し始めた
麻奈美と一緒に移動しようとしたけど、慎に止められてあたしはいつも乗る車で敦先輩と慎と黄龍のたまり場まで移動した。
車のなかでも相変わらず忙しそうに敦先輩はパソコンをいじっており、慎は何かを考え込むように黙って目を瞑って窓に持たれていた
あたしもすることがないので窓の外をみた。
どんどん流れていく景色をただなんとなくぼんやり見ていた
…そういえば、もうすぐ月初めになるな
毎月初めにある“検査”を考えると気が少し重くなる
もっとこの時間を楽しみたい。
それなら問題を起こさず、ちゃんと行かなくては。
でも、みんなにはなんて言ってその日倉庫にはいけないと言えばいいのだろうか。
できれば、嘘は付きたくない。でも全てを話すことはできない。
慎たちも大蛇について何もあたしに説明できないように、あたしにも説明できないことはある。
蓮と一緒にいたとき、遠山が言ったあの言葉…
『人殺しの子が逃げるとかマジモンの逃亡劇じゃん』
…これだけはみんなに知られたくない
蓮はあの時何も言わなかったけど、後でみんなに話すのだろうか?
いや、多分蓮はそんなこときっとみんなには言わないんだろうな。あの時一緒にいたのが蓮で助かったと思った。
あぁ、どうしようか…。
そんなことを考えていたらいつの間にか眠りに落ちていた。