人魚の涙〜マーメイド・ティア〜



「ーん、ーちゃん、ー千晃ちゃん!」



誰かの呼びかけで重たい瞼を開ける



「あ、れ…あたし、」


「おはよう。よく寝れた?」



目を完全に開けると敦先輩があたしを起こしていた。



「重い…」



すぐ近くから慎の声がすると思って声がした方向に向く



「うわっ!!!」



びっっくりしたぁぁぁぁ、ドアップの慎は心臓に悪すぎる!


どうやら、あたしは車の中でそのまま寝てしまっていつの間にか慎に持たれて寝ていた



「…驚くな。」


「ご、ごめん!重かったよね!そりゃそうだ!」


「大丈夫だよ、千晃ちゃん。フフッ、さぁ、黄龍の倉庫についたよ。降りて」



なぜか拗ねたようにも見える慎を横目に敦先輩が差し出してくれた手をとり、車から降りるとそこは



ーブブブォォォォォオォン!!



すごい数のバイクと人がいた。



「え、なに、これ…。」



開いた口が塞がらないとはこのこというのだろうか、いや、多分違うだろうけど。


でも、それくらい圧巻だ



「驚いた?結構いるんだよ、ウチのチームは。」



敦先輩が微笑みながら教えてくれる



「神獣っていう大きなチームで傘下も合わせて言うなら500人以上の規模ではあるよ。」


「すごいですね…。こんなにいるなんて知らなかった。神獣に出入りしてる子たちはざっと50人くらいだと思ってたから他も勝手にそんな感じかと思ってました。」


「んー。そうだね。神獣単体でいうなら50人くらいでの編成だよ。でも、それだけ限られた人しか入れない。俺たちのいるところそういう場所なんだよ。」



じゃあそれ以外で残り450人もいるということ?


すごい、凄すぎる…


寝起きで偉いものを見てしまった…



「中に行くぞ。」



圧巻なバイクと人たちを見てると、いつの間にか隣に立っていた慎が声をかけてくる。



「行こうか、千晃ちゃん。はぐれないようにね!」



そう言って進んでいく二人に頷いてついて行く


怖いお兄さんたちの間に今までなかった道が開いていく



「総長!お疲れ様ですっ!!」

「シャッス!」



みんなが二人に声をかけながら道を開けていくおかげで、はぐれることはなくついていけるが視線がすごい刺さる


あたしもいつも喧嘩早いからといってこんな怖いお兄さんたちに囲まれたら流石に怖気つく



…正直早く通り過ぎたい



自分だけ場違いな気がしてならない


二人の後ろを歩くけど二人共堂々としててすごくかっこいいと思う。


そんな二人の後ろに並ぶことに少し恥ずかしさを感じた


今までは感じたことがなかったけどさっきも規模の話を聞いてあたしなんかみたいなミジンコが近づける存在じゃないってことを初めてちゃんと目の当たりにして…


あたしは特に喧嘩が強いわけでもない、圧倒的に綺麗なわけでもない。


そんなあたしがこんなすごい人たちの傍に居てもいいのだろうか?


みんなが向けてる目に答えられるほどの自分は器の人間じゃない…


そんな暗い考えに飲み込まれそうになっていたとき、体に衝撃が走って倒れそうになるのをぐっと堪えてぶつかってきた子を見ると見慣れた姿に安心した



「千晃ー!!遅いぞ!!」


「波瑠、さっきぶり。」



抱きついてきた波瑠になんだかホッとした


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