人魚の涙〜マーメイド・ティア〜



自分が不安になってたせいか、何も変わらない波瑠の態度に安心した



「千晃の幼なじみって子、もう上にいるぞ!早く行こう!」



広場の上に繋がる階段を指して波瑠はあたしをグイグイ引っ張っていく



「麻奈美もあの上にいるの?」


「あぁ!いるぞ!千晃、その子といると喜ぶだろ?本当は俺とずっと喋ってて欲しいけど仕方ないから譲るんだ!」



…あぁ、女嫌いの波瑠が成長したなぁ


あたしのために、麻奈美のことを認識して気を利かせてくれている


それだけで波瑠は強くなったと思う


それに比べてあたしは人の視線を気にするようになってしまった。見られることにどこか恐怖を覚えてしまった…


嫉妬、妬み、羨望、憎悪…


そんな視線をいつの間にか嫌になってしまっている


…情けないな


慎たちに出会ってから自分の中でいろんな感情が動き出して、それに戸惑ってるあたしが居る


別に慎たちと一緒にいることが苦痛なわけじゃない


その視線に打ち勝てる自分がいないだけだ



…もっと強くならなきゃ。



「千晃!」



麻奈美の声で自分の思考が止まる



「どうしたの?ボーッとして。」



麻奈美の顔を見る心配そうにあたしを見ている



「ううん、何でもない!人のスゴさにびっくりしただけ!」


「まぁ、確かにそうね。千晃は初めてこの集会に参加するものね。私も初めて昴に連れられて来た時は怖くて昴のそばか、白龍の子達のそばから離れられなかったもの。」



麻奈美もそうだったんだ。


でも、慣れる時が来るのかな。…いつか。


そのいつかが今すぐにでも来てほしい、みんなの隣で堂々と笑っていたい



「二人共ー!乾杯するからこっちきてー!」



早乙女さんがあたしたちのことを呼んで飲み物をくれる



「二人はもちろんジュースね!」



ウィンクしてくれる姿はまさにどこかのハリウットスターにも負けてないだろう



「じゃあ、揃ったわね。みんなも持ったー?」



早乙女さんは下にいる子達にも声をかけて確認する



「じゃあ、神獣の新しい姫の歓迎と我らの勝利を祈って!かんぱーい!!」



早乙女さんの合図で倉庫が揺れるくらいの雄叫びで宴会が始まった



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