人魚の涙〜マーメイド・ティア〜



そこからは凄かった


未成年が飲んではいけないもので飲み比べが始まり、どんどん死んでいく人


トイレに走る人、そのへんで寝ちゃう人、野球拳しだす人、いろんな人がいてあたしはそんなみんなを見ながら楽しんだ


ここはすごく自由でなんて楽しいんだろうか


途中まで麻奈美と一緒にいたんだけど



「お義母さんが心配するから。」



と申し訳なさそうにあたしに謝って白龍の人に家まで送ってもらい帰っていった


麻奈美が“お義母さん”と呼んでいることがあたしにはすごく嬉しく思った


そんな風に言える人がいること、そんな風に心配してくれる人がいてよかったと思った


それからは一人でボケーっと人間観察しながらみんなを眺めてた



「千晃ちゃん、大丈夫?」



しばらくすると敦先輩が隣に来ていた



「はい、大丈夫ですよ。あたしはお酒飲んでませんし」


「フフッ、そうじゃなくて、退屈してないって意味で。」



敦先輩は優しく笑って訪ねてきた



「いえ、みんなを見てるだけで楽しいです」



敦先輩もいろんな子から声をかけられて飲み物をつがれていた、それを律儀に全部飲んで会話していた


話をしていた子はどの子も嬉しそうに話してて、みんな敦先輩のことが好きなんだなって感じた



「敦先輩こそ、体の方は大丈夫なんですか?」


「…俺?全然平気だよ。」



顔色一つも変わらない敦先輩をみると相も変わらずいつもと変わらない表情だった



「…お酒、強いんですね。」


「あー、バレた?飲んでも全然酔えなくて。体質の問題かな?」


「体質関係あるんですかね?でも、興味ありますね。敦先輩が酔ったらどうなるのか」



みんなを見てて思ったのは人それぞれ酔い方があるってこと


慎は少しだけいつもより笑ってて、蓮はさらに横暴になって、波留はもう寝てて、奏多は無駄に色気が増していた


でも敦先輩は見てても変わらない、いつもの鉄壁の笑顔が崩れない



「…興味ある?俺が酔っ払ったとこ。」


「えっ」



グイっと顔を近づけられて一瞬フリーズした



ち、近い!!



いや、さすがにこんなイケメンにドアップで直視されるのは心臓が持たない


そしてなにより、急に異常な色気を感じる


少し顔を引きながら答える



「え、えぇ、まぁ、いつも崩れないからどうなるのかなって。」


「それは、どういう意味で?」



膝の上に置いていた手が敦先輩によって指が絡められる



「ど、どういう意味でと、も、申されましても…」


「ブッ!申されましてもって、クックックッ、あー、千晃ちゃんはホント面白いね。」



今度は急に笑い出してあたしから離れる。


これはもしかして…



「か、からかわないでくださいよ!!」



あー、もうびっくりした。多分敦先輩はあたしの反応を面白がってただけだ


それがわかるとさっきのあたしのドキドキ返して欲しいわ!



「ごめん、千晃ちゃんの反応が可愛くてついね。」


「そんな言葉にあたしは騙されませんからね!」



可愛いとか言って誤魔化そうとする先輩を睨む


まだ笑ってる…、そんなに面白い顔してたのかな…



「ごめんって。ほら、拗ねないで。千晃ちゃんが寂しい思いしてないかなっていうのが半分と俺が今日千晃ちゃんとあんまり話せてなくてつまんなかったんだ。からかってごめんね?」


「あたし、そんなにいつも面白い話してませんけど。」



先輩はあたしをまるで芸人か何かと勘違いしているのだろうか?



「ブッ、そういうところだよ。ホント千晃ちゃんには笑わせてもらってばかりだな~」


「笑わせてるつもりはないんですけど。あ、でも初めて会った時より、本当の笑顔で笑いかけてくれるようになりましたよね?」


「えっ…」



あたしの言葉に今度は先輩が固まる


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