人魚の涙〜マーメイド・ティア〜
俺のヒーロー
俺は昔いじめにあった。
正確に言えばいじめる側からいじめられる側になった。
小学生の頃、俺は顔がその頃から整っていたせいかクラスの中心にいた
だから周りに人は溢れていて新しいゲームが出たりするとよくダチの家に集まって遊んでたりした。
でも、いつからだろう。周りが他人の悪口を言うようになったのは…
「なぁ!奏ちゃん!なんかあいつ臭くね?」
会える日クラスメイトがそんなことを俺に言ってきた
「え、そうか?俺は何も感じないけど。」
「えー!みんなも臭うよな?」
そんなことよく大きな声で言えるな、本人に聞こえるかもしれないのに。
そう思ってその言われた男を見ると、顔を赤くして俯いてた
ほら、言わんこっちゃない
「あいつ、クセーから家に呼ぶのやめようぜ。」
「え、」
俺は思わず驚いて声を出してしまった。
「なんだよ、奏ちゃん。俺の家に来るんだから俺が決めても文句ねぇーだろ?」
そう言われてしまうと何ももう言えなくなってしまう。
「うん、まぁ…」
それ以来その子と話すことはなくなり、いつもそいつは一人になった。
ここから俺のしんどい日常が始まった
「なぁ、アキト。なんかみんなの雰囲気変だよな。あいつを無視するようになってから。」
俺はグループのなかでも一番仲のいい、アキトに帰り道そんな話を急にふってみた
「あ、うん、そうだね。」
アキトは優しくて頭がいい、みんなによく宿題見せたり、ゲームでも一番に攻略方を見つけてくる。
「なんつーか、こういうの俺やだわ。」
「うーん、でもみんなやってることだから仕方ないんじゃないかな…」
アキトは困ったような顔で笑う
「せめて放課後俺たちだけでもあいつと一緒に帰ってやんね?」
俺の発言にアキトは戸惑った
「え、それはまずいんじゃないかな。」
「なんで?いいじゃん、かわいそうだろ。」
「…うん、そうだね。」
この時の俺はアキトが暗い顔してることに気付きもしなかった
アキトはこのクラスのいじめをちゃんといじめだと認識していた
俺はいじめだということを知らずにいた
実際いじめがどういうことなのかわかってなかった
なんせ人生で初めての経験で誰かがそれをいじめだと教えてくれる人もいなかった
言い訳かもしれないがいじめとは無縁の生活だったし、それを誰かがいじめだと明言することもなかった
だから気付けなかったんだ、アキトが何におびえているのかも、俺の言葉で傷ついた奴のことの気持ちも。