人魚の涙〜マーメイド・ティア〜
次の日から無視されていたそいつも一緒に帰るようになった
そいつの名前はジュンタ。
「ジュン、これお前が好きな本!持ってきたぞ!」
「あ、ありがとう。貸してもらってごめんね。」
「んな、謝ることはねぇーよ!ジュンの机にいつもこの主人公落書きしてあるよな!そんな好きなら漫画買えばいいのによー」
俺の発言にジュンは暗い顔して応えた
「…僕の家はビンボーだから親に言えなくて」
ビンボー、この言葉でジュンは虐められていた
俺はこの頃無知すぎた。無知は罪だ。
ビンボーの意味もわからず話していた自分が愚かすぎた
アキトはこの言葉の意味がわかっていたからみんなの反応についていけたし、俺がジュンも一緒に帰ろうって提案した時も、「帰りまでは話しかけないこと」と俺に約束させた
「まぁ、ビンボーがどういう意味か知らねぇーけど、欲しいもんは欲しいって言わなきゃダメだぞ。」
この時の俺の言葉は物凄く軽率だった
ジュンには新手ないじめにみえただろう
「…そう、だね。ごめんね。」
「謝んなよ~、友達だからな!」
俺の言葉に困ったような笑顔で返すだけだった。
「じゃあな、ジュン!」
「うん、漫画明日には返すね。」
「いいって!ゆっくりで!返したくなったら返してくれればいいからさ!」
そう言ってジュンとは別れて、アキトと二人になる
「あのさ、奏ちゃんは明日がどうなるとか考えたことないの?」
アキトは何かにビクビク怯えながら周りをしきりに見ていた
「は?何訳のわかんないこと言ってんだよ。明日なんていつも通りに来るだろう?」
「…僕は、明日どうなるか、物凄く怖いよ。」
泣きそうな顔をしながら訴えてくるアキトに俺は疑問しかなかった
ジュンとは帰りだけ話して、学校の間は話かけない、そんな日常に慣れてきた頃。
それは急に訪れた
「なぁ、奏ちゃん。アキトと仲良くするのやめない?」
「は?」
そう言ってきた奴はジュンのことを一番最初に臭いと言って無視するようになった、サクヤだった。
サクヤの言ってる意味が理解できず
「何、アキトと喧嘩でもしたの?」
「は、違うよ、奏ちゃん。ビンボーだけじゃつまんないじゃん!」
「なんだよ、それ。意味分かんねぇよ。」
「もー。とにかく!今日からアキトと仲良くしたらダメだよ?」
サクヤはそれだけ言い残してクラスの中に消えていった
それから、アキトに対する無視は始まった。
俺はアキトに何度か話しかけようとした、だけど周りが
「ダメだよ、奏ちゃん。みんなに従わなきゃ。」
それの一点張りで、話しかけることを許されなかった
帰りも一緒に帰ってたはずなのに
「奏ちゃん、アキトと一緒に帰っちゃだめだから一緒に帰ろう」
そう言われて周りに流されるまま、しばらくアキトと話す機会もなかった
その期間に、アキトやジュンの中で俺への見方はどんどん変化していった
そんなある日、アキトに話しかけれるチャンスがやってきた