人魚の涙〜マーメイド・ティア〜
「ん、」
ー…シャッ!
「あ、ごめん早見くん。起こしちゃった?」
目を覚ますとそこは保健室だった
「あ、れ…なんで俺ここに」
「あー、うん、覚えてないかな?階段から落ちて軽い脳震盪になったんだよ。もう少し寝る?」
ー…あぁ、俺階段から突き落とされたんだ。
「…いや、今何時間目ですか。」
「今は五時間目だけど。一応給食ももらっといたから食べる?」
先生は俺の前に給食を出してくれるけど今の俺には腹を満たすよりやることがある
「いや、いらないです。俺授業に戻ります。」
ベットから降りて扉に向かう
「…ねぇ、早見くん。その、何か辛いことでもあるの?」
「は?」
急に変なことを聞かれたもんだから変な声が出た
「いや、いやね。先生の勘違いだったらいいんだけど。その手の傷…何かで切った後だよね?」
そう言われて指先を見る、そこには包帯が巻かれていた。
保健室に絆創膏をもらいに行くのがめんどくさかったからそのままにしておいたのだが、どうやら先生が処置してくれたらしい
「もしかして、いじめ、られてるの?」
「…いじめってなんすか。」
「え、」
先生は驚いていたけどいじめとは何か説明してくれた
それは、相手を無視すること、傷つけること、無理強いすること、暴力を振うこと、暴言を投げかけること
他にもいっぱいあるんだと教えてくれた。
そこで俺は初めて理解した。
今までアキトやジュンにしてきたことはいじめだったのだ
俺もみんなと同じになってあいつらを無視した。なにか危害を加えたわけではないけど、無視してしまった
…それはいじめと変わらない
俺は無知なことを恥じた
何もかも知らずにみんなに合わせてそれがおかしいと思ってたくせに声を上げなかった、俺はみんなに加担したに過ぎないのだ。
先生にお礼を言って保健室を出ると教室に向かった
向かってる途中でチャイムがなったから多分もう五限目は終わった
次は掃除の時間になる。より、俺を突き落としたやつと話すチャンスは今しかない
そう思い、急いで教室に戻るとまだそいつは自分の持ち場に移動せず教室にいた
俺は声をかけた
「なぁ、ちょっといいか。」
そいつは俺を無視する。…まぁ、だろうな。
「放課後、あの場所で待ってる。」
今話してもそいつは周りの目が合って話すことはできない。それは想定内だ、だから俺たちしか知らないとこでちゃんと話すのが一番だと思った