人魚の涙〜マーメイド・ティア〜
掃除が終わって放課後になると俺は指定した場所にいった
辺りを見渡すとまだ来てないようだった
ここは空き地でよくサッカーとかもしていた場所だ
「…来たか、正直来ないかと思ったよ。」
物思いに耽っていると足音がしたので振り返る
「…ジュン。なんで階段であんな事したんだ?」
「…。」
俯いたまま、そこに立っているジュンは何も話さない
しばらくな間沈黙が続く、それが10分なのかもっと短いものなのかは分からないが俺には長く感じた
ここでよくゲームしたり、好きな漫画持ってきて貸しあったり…俺ら、3人にとって秘密基地な場所だった
最初はアキトとの二人だけの秘密基地だった、だけどそこにジュンが加わって…俺たち3人はあんなに楽しい時間を過ごしたんじゃないのか?
その全てがこんなに簡単に終わってしまうものだと思いたくなかった
だから、俺はここにジュンを呼び出して謝ろうと思った。今までの事全部。無意識だったとしても、友達だと信じてたやつに俺はひどい事をしていたのだから。
勝手なお願いかもしれない。お互いに謝ればまたあの時みたいに戻れるんじゃないかって。
…俺はそう期待したんだ
でも、ジュンの放った言葉は俺を簡単に突き放した
「僕は君のことが最初から好きじゃなかった、嫌いだった。」
その言葉に俺の頭は何か硬いもので殴られたような衝撃だった
「…最初からってなんだよ。」
ジュンの言葉に手足が冷えていくのがわかる。それは、寒さのせいなのか、俺の心が冷え切っていくせいなのかよくわからなかった
「…言葉通りだよ。僕は君みたいにカッコ良くもなければ、賢くもない、スポーツも対してできない。初めは君が単純に羨ましかった。でも、僕に声をかけて来てくれるようになってきてからは、それは変わっていった。」
なんだよ、どういうことだよ。
何も言うことができず黙ってジュンの話を聞く
「ここで君と遊ぶようになって、サッカーして僕がうまく蹴れなかった時、君はなんて言ったか覚えてる?」
ジュンの瞳がここに来て初めて俺を捉える
その瞳は怒っているのか、軽蔑しているような。何も読めない瞳のせいで迫り来る何かの気配を感じてうまく頭が回らず何も思い出せなかった
「…やっぱり覚えてないんだね。そうだと思ったよ。」
「ま、「なんでそんなこともできないんだよ。そう君は言ったんだ。」
俺の言葉を遮ってジュンは呆れたような笑みで言い放った
「君はなんでもできて出来ない人の気持ちなんてこれぽっちもわかってない、人の心を平気で踏みにじるそんな人だよ。」
待てよ、そう言いたかったけど何も言葉が返せなかった。
だって、ジュンの言うことは正確に俺の胸に突き刺さった
確かに俺はそう言った。でもそれは、ジュンだけじゃなくアキトや他の人にも言ったことがある言葉でその言葉で違う誰かも傷つけている…?
もう、わからない。俺には何が言っていい言葉で、何が悪い言葉なのか、幼すぎる俺にはわからない
なぁ、教えてくれよ。それが俺を階段から…、友情という階段から落とした答えなのか?