人魚の涙〜マーメイド・ティア〜
「アキトくんも君のことホントは嫌いなんだよ。」
「は?」
急に浴びせられた言葉に処理が追いつかない
「なんでここで急にアキトが出てくるんだよ。確かに今日アキトにはいろいろ言われたけど、嫌いなんて…」
「気づいてないの?アキトくんは、自分がいじめられないように君の人気の後ろに隠れて過ごしていたいだけなんだよ。」
アキトがそもそも俺を利用するために傍にいたってことか?
「アキトくんは君の無知さにほとほとイライラしていたらしい。おまけに偽善者ぶって僕に関わった。そのせいで君を恨む気持ちが増幅して…君を階段から落として懲らしめようって提案してきたのも、アキトくんだ。」
…アキトが?
「う、うそだ、だってお前が俺を」
「そうだよ、落としたのは僕だ。サクヤくんに気に入られるためにね。」
は?なんで今このタイミングで今度はサクヤが出てくるんだ
「このゲームみたいなイジメはサクヤくんが始めた。みんなサクヤくんに嫌われないように必死だよ。でも、君は圧倒的なルックス、圧倒的な支持。サクヤくんは全て君を蹴落とすためにやっていることなんだよ。」
理解が追いついてない俺にわかるようにダラダラと説明を始めるジュン。
「…意味がわからない。んだよ、ルックスって、なんだよ支持って!俺にはそんなもん何もねぇーよ!!」
別に俺は普通に生きてるだけだ、何気ない日常生活をしたいだけだ。それなのに、なんで…友情まで何もかも嘘のようになるんだよ…
「君は誰にも友達なんて思われてないし、君はただのお飾りだよ。言わば神輿。この小さな世界でも権力や欲にまみれてるんだよ。そんなことも知らないで過ごしてるんて、おめでたい奴だよ。」
もういい、もう何も考えたくない。
何がホントで何が嘘かなんてもうどうでもいい。
好きにすればいい。何もかも。
ー…もう俺は誰も信じない…ー
あの日、ジュンと話してからどうやって家に帰ったのかもわからないまま気づいたら朝が来ていた
一瞬全て夢なんじゃないかと思った
でも、何も夢じゃなかった
その日からクラスを上げての俺へのイジメはさらに加速した。
誰も声をかけてこなければ、目も合わせない。まるでそこにほんとに俺という人間は存在しないかのようだった
でも、一番しんどかったのは、無視されることでも暴言を吐かれることでもなかった
「ほら、立てよ。」
サクヤに髪の毛を掴まれて無理やり立たされる。
そしてボールが俺をめがけてヒットする。
…球を投げているのがジュンとアキトだということ。
きっと俺はそれが何よりも辛かった。
助けてくれるはずもない日常をずっと過ごして小学生活を終え、中学に上げるまでは絶望の日々、もう誰も信じられない日々…
それをガラッと変わる出来事がある日突然起こった