人魚の涙〜マーメイド・ティア〜



その日以来俺の生活は一変した



「れーん!!」


「んあ?」



屋上で寝そべる蓮に駆け寄る



「また、オメェかよ。毎日毎日しつけぇーな。ま、俺も飽きねぇーからいいけどよっ!」



起き上がると同時に俺に殴りかかる、それを間一髪で交わす


蓮に助けてもらった次の日から二年生の教室を訪ねて、蓮をみつけて頼み込んだ。



“俺を強くして欲しい”



蓮はその提案を最初はめんどくさがってノってこなかったけど、それならと思い強行突破でこっちから殴りかかってみた


そしたら、お前面白くて退屈しねぇ。ということで毎日喧嘩という名の稽古をつけてもらってる



「グアッ!!」



蓮に踵落としをされて屋上の地面に倒れこむ



…ちなみに蓮に一度も勝てたことはない。



「ハッ、今日も俺の勝ちー!」



倒れてる俺の横に蓮も寝そべる



「あー、マジいい天気だわー。」



蓮の呟いた声に釣られて俺も仰向けになって空を仰ぐ



「だな…。俺、空とかこんなふうに眺めた事ないかも。」


「はぁ?そりゃ、お前もったいねぇーぞ。」



勿体無いか…。こんなふうに空を眺めれる余裕、上を向いて歩くことがあの悪夢が始まって以来かもしれない。



…ほんとに蓮のおかげだな。



それから毎日喧嘩は続いてお互いに一年経った。



「雨宮と早見だな!!?この前の借り返すぜ!!」



路地を歩いてるといつの間にか囲まれて先頭の男が何かをほざいている



「あ?この前?奏多お前覚えてるか?」



蓮は俺に問いかけた



「え~、俺知らな~い、どうせ蓮がむやみに殴ったんじゃん?」


「はぁ?俺のせいかよ!お前も言うようになったな、あん?このやろう?」


「や~ん、蓮怖~い」



出会った頃とは想像できない掛け合いになっていた



「てめぇら…随分と余裕こいちゃってくれてんなぁ!!」



顔をタコのように真っ赤にさせながら男は殴りかかってきたけどヒョイっと避けながら蓮に返す



「じゃあさ、どっちが多くこいつらのせるか、勝負しない?」



蓮は俺の提案にニヤっと笑って



「ノった!」



そう言って次々相手をのしていく俺たち



「ん~、もう終わり?ヤリごたえなかったね~」


「そうだなぁ、最近この街で俺たちに喧嘩売ってくるやつもいないし、強いやつもいないからつまんねぇわ。」



学年が一つ上がる頃にはもう俺たちはこの辺の有名な不良になってた、俺たちが道を歩けば勝手に人が避ける


最初のうちは蓮がよく喧嘩を売られててそれに巻き込まれる感じで喧嘩に引き込まれたけど今では二人に喧嘩を売ってくるやつが増えた


それも今じゃほとんどこの街の不良は俺たちに負けて意気消沈してるけど。



「なぁ、奏多。隣町にいるすげぇ強いやつの話聞いたことあるか?」



蓮はのしたやつの中から財布を抜き取り軽く札を取る。


おいおいと思いながらほっとく



「あ~、なんか黒髪でいかにも喧嘩しなさそうな優男な美少年がめちゃ強いらしいね~」



そう答えると俺の好きな笑い方でニヤっと笑う


あ~、嫌な予感。



「行ってみね?」


「…言うと思った~」



もうかなり時間も遅いし今日じゃなくてもいいと思って明日行こうと提案した



…でも、この日時間なんか気にせず隣町まで行ってたら何か変わったのかもしれない


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